【チャペル】2020年5月26日「風、息、いのち、呼び声」李政元 教授(家族福祉論、データ解析Ⅱなどを担当)

5.26 李先生
マルコによる福音書 4章 39節
イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。新2回生、新3回生、新4回生の皆さんお元気ですか?
 本来であれば皆さんの元気なお顔を拝見しながらチャペルの時間を持てたらと願っておりました。自宅やあるいは下宿先でこれを聞いている皆さんはどのような毎日をお過ごしですか。
 今、風が吹き荒れています。私たちの乗っている社会という船は大きく激しく揺らぎ、私たちは今にも命と生活を運ぶその船から振り落とされようとしています。
 新型コロナウィルスに日々、多くの人々が感染し、命を落としています。目に見えない小さくも大きな敵の前に、私たちは殆ど何もできずにただ立ち竦むばかりです。生命の危機に瀕するとき、自分を守ってくれていると信じていたものが私たちから一枚そしてまた一枚と剥がれ落ちていきます。
 人は、自身の命が危険に晒されるとき、あるいは対処困難な出来事に遭遇するとき、心は平静さを失い、身に降りかかった出来事の責任を自分以外の誰かのせいにすることがあります。平静を失った心は、その凶暴性を剥き出しにして、自分以外の誰かを攻撃することすらあります。
 今のこの危機は、私たちに問いかけます。「あなたは、これからどうするのか」と。
 私たちが体験している喪失の多くは、新型コロナウィルスの存在だけによるものでは説明が尽きません。私たち人間がこれまでに、小さくも誤った「合理的」な判断?を積み上げてきたことによってもたらされたものも少なくないのです。それら小さくも誤った判断の裏には、大切なことの順番付けを少しずつ間違えてきたことにあるように思います。
 地球規模で人とモノの移動はかつては想像もできないほど速くなり、同時にウィルスの伝播も制御できないほど速くなりました。大都市圏を中心とした経済活動の局地化は一見すると合理的選択のように見えますが、そこでウィルスは猛威を振るい、全てが揃っていたはずの大都市の医療資源をあっという間に食い潰し、医療は崩壊し、救えたはずの多くの命を奪っています。
 皮肉にも、人間の外出と経済活動が抑制されるなか、淀んでいた空、川、そして海が澄み渡り、生き物たちが帰ってきたという知らせを耳にするようになりました。「今、人々に光は見えないが光は大空に輝いている。風が吹き渡り、大空を掃き清める。(ヨブ記37章21節)
 今の危機は私たち1人ひとりに問いかけます。「あなたは、これからどうするのか」と。
 今回の出来事は多くの人たちの人生を一変させました。突如ウィルスとそれによって引き起こされた病によって人生を中断させられた人々、愛する家族が奪われた人々、人を疑うようになった者、人を差別し批判・攻撃するようになった者、いやいや、人をより信頼するようになった者、自分以外の誰かの命を守りたいと考えるようになった者、この世界をより良くしたいと考えるようになった者がいるはずです。そして皆さんはどうでしょうか?「あなたは、これからどうするのか」との問いかけにどのように応えますか。

本日の聖書をもう一度読んでみます。

イエスは起き上がって、風を叱り、湖に、「黙れ。静まれ」と言われた。すると、風はやみ、すっかり凪になった。
今、激しく吹き荒れる風のなかから、私たちに「静まれ」との呼び声が聞こえてくるように思います。祈りましょう。

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  • 投稿日時:2020/6/1 15:38

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