2010年10月

人間の条件~最終回~

こんにちは(*^^)v研究演習Ⅱの中野です。
記録的猛暑(!!)だった夏もようやく終わり、だんだんと秋めいてきましたね。
秋といえば、芸術の秋、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋…とよく言われますが、皆さんはどんな秋にしますか?私は「食欲の秋」にしたいので食べ過ぎには気を付けながら秋を満喫しようと思います★

さて、9月30日に行ったミクロゼミの報告をお送りします。すでにご存じの方はいらっしゃると思いますが、マクロゼミは毎回1冊の本を読むので1冊ずつ紹介することができるのですが、ミクロゼミは1冊の本を少しずつじっくり読み進めますので、ご紹介するのは最終回を迎えてからとさせていただいています。

このハンナ・アレント著『人間の条件』は、春学期から夏合宿を通して、そして今回のゼミでついに、この本の最終章である、「第六章<活動的生活>と近代」を読解しました。

6月11日の記事(http://kg-sps.jp/blogs/kamata/2010/06/11/172/)にもあるように、アレントは本著において、人間には労働力・仕事力・活動力の3つの活動力があり、それが人間としての条件だと述べています。

この3つの活動力を簡単に紹介すると、
労働…生存のための欲求充足をしようとすること(例:生きるために食べる・働くなど)
仕事…人間の生命過程を超えた物を作ること(例:後世に自分の功績を伝えるための本)
活動…人との関わり(言論)を通して共同生活を営むこと
となります。アレントは「活動」こそが人間の条件の中で最も優位にあるものだと主張しているのです。

今回のゼミで扱った6章では、主に近代における問題点を5章まで述べられてきたことを用いながら論じています。アレントは、近代は産業革命以降、大きく時代が変わったことで「労働」でのみ人間が評価されているということに問題意識を持っています。

つまり、現代では「人間の条件」を満たすものとして仕事と活動を維持するための生命維持という役割の労働が最も優位なものとして捉えられているのです。

例えば、私たち多くの学生がアルバイトを経験しますよね。その中でアルバイトの募集要項に「時給○○円」と記載されています。アレントの主張から、この「時給○○円」で人を評価し労働力として捉えていると解釈することができます。誰もが時給のことを当たり前として考えていますが、違った視点で物事を考えることで新たな問題意識をもつことができますね。

アレントは、人を「労働」のみで評価してしまうことで伝統社会の持っていた人との関係性が失われてしまうと述べています。さらに、近代では労働が評価されることで活動が影を潜めてしまい、「人間らしさ」が失われてしまうと指摘しています。それが近代以降の問題であり、共同性のない現代社会にアレントは警鐘を鳴らしているのです。

ここまでで報告は終わりです(*^_^*)
秋学期の一回目のミクロゼミから熱い議論をすることができました!この回を最後に『人間の条件』を読み終えたことで、ゼミ生一人一人の研究に大きな力となったのではないでしょうか。

以上、9月30日のゼミ報告を中野がお伝えしました(^^♪

ゲマインシャフトとゲゼルシャフト

こんにちは、研究演習Ⅰの高橋祐介です!いよいよ鎌田ゼミも秋学期です!
これからリサーチフェア等の、春学期とは少し違ったゼミ行事が盛りだくさんの秋学期、目が離せません!(^^)

今回は9月21日の秋学期第一回マクロゼミの報告です。今回の文献はテンニエス著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』。ドイツの社会学者テンニエスが提唱した二つの概念について書かれた文献です。

 

著者であるテンニエスはドイツの社会学者で、1881年にキール大学の私講師に就任し、経済学で教授に昇進。その後一時大学を離れ1921年に社会学の教授として大学に戻りますが、1933年にナチスによって職を失ってしまいます。その後はマックス・ウェーバーらとともにドイツ社会学会の創設に参加しています。

著書『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』においては、本質意志と選択意志という自らが樹立した意志の二形態に対応させて社会的な関係様式をゲマインシャフトとゲゼルシャフトに二分し、支配的な関係様式が前者から後者へと移行していく歴史観を提起しました。

 さて、さきほどからでている二つのキーワード、「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」とはどういったものなのでしょうか?
ゲマインシャフトは共同体組織と呼ばれ、それに属する人ひとりひとりのために存在しています。家族のような血縁関係もこのゲマインシャフトに属しています。ほかにも身近なところで学校の部活、教会などの宗教団体、スポーツや文化活動サークルなど、主に満足感・安心感を得られることを目的としています。
これに対してゲゼルシャフトとは、機能体組織です。つまり組織自体に目的があり、所属する人たちがその目的のために動くことになります。企業のように、会社の利益のために一致団結して動くさまなどまさにこれにあたります。
また、面白いことにこの本は創業期の会社をどう成長させるかを考える際に知っておくべきものが載っているということで、企業に勤める方々にはよく読まれているものらしいです。

他にもゲマインシャフトとゲゼルシャフトは、パーソナルとインパーソナル、親密な人間関係と打算的な人間関係、自然と形成されるものと、人為的に形成されるもの等、多くの対比がみられます。ゼミでもこれらの対比について議論が白熱していました。
 
さらに社会が資本主義へと移るにつれ、人間関係も計算尽くの関係へと変化していきます。これはマルクスの資本主義や、ホッブスの市場社会についての見解も知っていればよくわかると思います。テンニエスもこのふたつの議論を結合させてゲゼルシャフトの理論を構築しており、そのうえで資本主義とは異なるゲマインシャフトの関係を提示することで資本主義化する社会の混乱を解決しようとしたのです。

この本を読んでみると、現在の自分の身の回りや、社会がどういう関係で成り立っているのか考えさせられます。違った視点で自分のライフスタイルを見つめなおすのに、いいきっかけになるかもしれません。

・・・・ところで、このテンニエスの『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』は、すでに絶版となっています。今の社会はモノであふれているとよく言われますが、こうしたいい文献が消えていくというのは寂しいものです。それでもまったく読めないわけではないので、興味があればぜひ目を通してみてください!

以上、秋学期第一回マクロゼミの報告について、研究演習Ⅰの高橋がお伝えしました!

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参考文献
・フェルディナント・テンニエス著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト―純粋社会学の基本概念―』杉之原寿一訳、岩波書店、1957年。

プロフィール


鎌田 康男
現在、関西学院大学名誉教授(2016年3月定年退職) 《共生と公共性の philosophy》 ★プロフィール詳細

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