2012年9月

9月25日 マクロゼミ エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』①

こんにちは、研究演習2の小林です。

ついこの前まではセミの大合唱でしたが、最近では鈴虫の奏でるオリゴールのような音色に耳を良く傾けます。

さて、9月25日にはエーリッヒ・フロム著『自由からの逃走』を扱いました。本著はエーリッヒ・フロムの主著で、ドイツからアメリカに亡命中に書かれたものになります。

本著で、フロムは自由を二つに分類します。一つは「・・・・・・からの自由」と表現される消極的な自由と、「・・・・・・への自由」という積極的な自由に分類します。

子どもは幼いときには親に命令や指図を受けながらも、愛情を感じ育てられていきます。そのとき子どもは親の命令に対し盲目的な態度を取ります。この時点で子どもは親の権威に従っています。しかし、年齢を重ねるごとに子どもは親から自立した個性を得ようとします。自分が何者であるかという疑問や他者との差異を感じるのは10歳前後の子どもに広く見られます。このとき子どもは親のもとで暮らしているわけですが、自由ではありません。しかし自我に目覚めるとき親という権威から自由になりたいと感じ、自由を得ようと親から分離しようとします。しかし、分離しても親の元にいたときの安心感が彼を束縛します。つまり、彼は自由を得た反面安心を失ってしますのです。このときに不安を感じ、孤独を感じるのです。

このことは、彼がいたヨーロッパやアメリカで人々は自由を得たと古い帝国が滅び自由になったと楽観的に自由を謳歌しようと浮かれていました。しかし、一方で人々は感じるようになったのです。孤独がドイツ全体を蔽うのです。孤独を感じた個人は、再び親に代わるような権威にすがろうとするのです。孤独は耐えがたく辛いことだからです。

このような状況は、近代に始まったのではなく、資本主義の発達にともなって見られるようになったのです。フロムによれば、資本主義は中世の階級を怖しました。階級があるとき人びとは自分の役割があるため、また自由がなくても孤独を感じることはほとんどありませんでした。しかし、産業の発達により、富を得る者がでたとき、下層階級に対し、抑圧的な態度を取り始めたます。このことによって、下層階級は虐げられ自分たちの個性を失ったのです。同時期にルターやカルヴァンが表われます。ルターやカルヴァンは教会を攻撃し、教会という権威を否定し、個人の努力を説き、個人の信仰によってのみ人は救われると説いたのです。個人の努力以外が、重要になったのはこのときからです。信仰によってのみ救われるという教説は、神への絶対服従を説くことと同義です。プロテスタンティズムにおいては神が権威になったのです。教会に代わる権威の登場によって虐げられてきた下層階級は新たな権威に従属したのです。

同様のことが近代以降顕著に表れたのです。人々は自由になったつもりでいても、新たな権威に従い、個性を捨て去ってしまうのです。このような状況を打破するために、フロムは個性を捨てず、積極的に活動することの重要性を説いたのです。彼は消極的自由よりも積極的自由を重視したのです。

以上が、今回のゼミの内容です。来週は、権威に従う人々の心理をさらにメスを入れていきます。

以上、小林からの報告でした。

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参考文献: エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』日高六郎訳, 東京創元社, 2011年 第1章~第4章

9月21日 ミクロゼミ テンニエス著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』 ①

こんにちは、研究演習2の小林です。 昨日から秋学期のゼミが始まりました。第1回ミクロゼミでは、鎌田ゼミのバイブルと称されるテンニエス著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』を扱いました。 テンニエスによれば、人と人の結びつきによって二つの共同体が存在すると言います。ゲマインシャフトtとゲゼルシャフトです。前者が生物学的有機的な共同体であるのに対し、後者が機械的目的論な共同体であるとテンニエスは言います。 まずゲマインシャフトについて説明します。テンニエスによれば、ゲマインシャフトは血や性によって結びついた共同体で母子関係、夫婦関係、兄弟関係がその典型であると言います。母子関係がもっとも結びつきが強く、兄弟関係がゲマインシャフトの中ではもっとも結びつきが弱いのです。ゲマインシャフトにおいて人々は互いに共有する場所や精神(宗教や文化や言語など)を持ちます。同じ場所に長く居住するゲマインシャフトにおいて人々はそのような関係性に居心地を感じ結びつきを維持しようとします。また、その関係性においては、語らずともわかるような暗黙の了解や、お互いで言語によって共有されるものがあります。あれやこれで意味がわかるというのをイメージしてください。 一方で、ゲゼルシャフトの関係性は、経済活動に見られるように、契約に基づいた関係であり、その契約は利害にかなった形で行われるものです。ゲゼルシャフトにおいて重要なのは利害関係です。利害が一致しない場合、その契約は破棄され、関係も解消されます。この場合における共有されるもの利害だからです。ゲゼルシャフトは目的をもって作り出された関係です。その目的を達成するために用いられるのが契約です。ゲゼルシャフトは社会の至る存在します。経済活動だけでなく、教育や政治など目的をもって作り出される共同体はすべてゲゼルシャフトなのです。 これら二つに分類したと上述しましたが、完全にゲマインシャフトだけで、また完全にゲゼルシャフトによってのみ構成される社会は存在しません。いわば上述したものは反実仮想(もし~であると仮定するならば、~であるだろう)なのです。ゲマインシャフトにも問題があり、完全なるゲマインシャフトだけになってしまったら人々の結びつきが強すぎて、全体主義的な関係性になってしまいます。一方でゲゼルシャフトだけの社会であるならば、人との関係性はすべて利害関係上でしか成り立たないものになってしまいます。ゲゼルシャフトはゲマインシャフトだけでは達成できないものがあるからこそ、生み出されたのです。ゆえに、社会を構成するゲマインシャフトとゲゼルシャフトがにバランスを保った関係であれば人間関係は維持できると関係が保たれるのです。しかし、現実にはそのバランスが崩れているというのが、テンニエスが本書で主張したいものです。 最後に昨日のゼミの様子の写真で、今回のゼミの報告とさせていただきます。以上小林からの報告でした。 —————————————— 参考文献: テンニエス著『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト(上)』杉ノ原寿一訳, 岩波文庫, 2011年 p.34~161

2012年度秋学期文献

こんにちは、研究演習2の小林です。 秋学期に扱う文献を紹介します。 マクロゼミ:  エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』東京創元社, デューイ『学校と社会』岩波文庫, ジャン・ボードリヤール『シミュレーションとシミュラークル』法政大学出版部, 九鬼周造『「いき」の構造』岩波文庫, エリック・エリクソン/ジョアン・エリクソン『ライフサイクル、その完結』みすず書房, シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』, 和辻哲郎『人間の学としての倫理学』岩波文庫 ミクロゼミ: テンニエス『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト[上・下]』岩波文庫, カント『純粋理性批判[上・中・下]』岩波文庫 また、各回にミヒャエル・エンデ『モモ』岩波少年文庫も併読していく予定です。 以上小林からでした。

2012年度春学期文献

研究演習2の小林です。 まだ暑い日が続きますが、ついこの前までセミが鳴いていたかと思いましたが、今は鈴虫が鳴いていますね。 大変遅くなりましたが、春学期に扱った文献を紹介します。 マクロゼミ: オルテガ『大衆の反逆』中央公論クラシックス, ヴェルナー・ゾンバルト『恋愛と贅沢と資本主義』講談社学術文庫, カール・ユング『自我と無意識』レグルス文庫, ジャン・ボードリヤール『消費社会の構造と神話』紀伊国屋書店 和辻哲郎『風土』岩波文庫, セネカ『生の短さについて』岩波文庫, デュルケーム『自殺論』中公文庫, 新渡戸稲造『武士道』岩波文庫 ミクロゼミ: ハンナ・アレント『人間の条件』ちくま学芸文庫, ホルクハイマー/アドルノ『啓蒙の弁証法』岩波文庫   マクロゼミは原則で1回で1冊を扱い、ミクロゼミは1冊の本を5回に分けて扱いました。 また、ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』NHK出版も併読しました。 簡潔にですが、小林からの報告でした。

プロフィール


鎌田 康男
現在、関西学院大学名誉教授(2016年3月定年退職) 《共生と公共性の philosophy》 ★プロフィール詳細

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