大学の価値とは?

本ブログを御覧の皆さん、こんにちは。

今回のブログは、小西ゼミ4回生の松井が担当いたします。

さて今日は、「大学の価値とは何か?」について、ブログというより少しレポート風に、3つのパートに分けて綴っていきたいと思います。

1. 大学の価値とは?
2. 大学の価値は今後どうなるのか?
3. これから高校生や大学生は、どのように大学生活を歩むべき?


    1.大学の価値とは?

    マクロ(日本経済全体から見た視点)ではなく学生個人の視点から見た際、一般的に大学の価値とは主に3点に分けることができるのではないでしょうか。

    ・経済的リターン … 大学に行けば、より高い収入が得られるといった類のこと

    ・個人の生産性向上 … 思考力を鍛える、スキルを身につけるなど、将来的に仕事に活用できるスキルを得ることや、根本的な能力向上を指す

    ・コミュニティへの所属 … 大学で得られる人との繋がりのこと

      一方で、しばしば議論になる「専門知識」については、学問の分野にもよりますが、私の所属するような一般的な文系学部においては、長期的に見ると、それほど役に立たないケースが多いのではと考えています。実際、『フィナンシャルタイムズ』と並び、世界で最も権威あるメディアの1つとして知られている『エコノミスト』において、アメリカの高等教育に関して、8つの記事から成る特集が組まれた際も、専門知識というワードは一度も出てきませんでした。

      すなわち、世界のトップスクールにおいても専門知識が将来役に立つとは捉えられていないということです。

      また上記の3つのうち、私自身は、大学のコミュニティとしての価値が最も大きいのではないかと考えています。

      なぜなら、大学とは同程度のスキルを持った、志向性の近い友人が集う可能性の高い場所であるからです。かつて著名な心理学者のアドラーが、「人の悩みは、全て人間関係に集約される」と言ったように、人生において自分に合った、また自分を磨くことのできる人間関係を築くことは非常に重要です。

      大学にもよるとは思いますが、ある程度の選考プロセスを経なければ、大学に入学することはできません。つまり、価値の源泉である希少性が担保されているということです。言い換えると、誰でも入れるコミュニティは、一般的に価値が低いということです。例えば、地元のサッカークラブとサッカーの日本代表の違いは、そこに所属するための難易度です。日本代表は、たくさんのサッカー選手の中から、たった20人の選手しか選ばれないからこそ、高いクオリティを保つことができるのです。

      では他の2つはどうでしょうか。

      結論から述べると、経済的リターンおよび生産性向上に対して、大学の貢献は証明されておらず、むしろ疑問符が付いている状態です。例えばアメリカにおいて、学部卒の資格は、その学費に対して15%程度のリターンが見込めるとされています。しかし、それが大学で学んだことによって生産性が向上した故なのか、それとも雇用者に大学の選考プロセスを通過したことが評価されているからなのかは、全くもって明らかにされていません。

      実際、企業がトップクラスの大学から採用を行うのは、候補者が大学において学んだことを評価している訳ではなく、その選考プロセスをクリアしていることを評価している、との研究結果もあります。(※資料1) これはいわゆる学歴主義と言われる状態で、学生は大学での学びよりも、将来的なリスク回避を主目的として大学に入学しています。

      また生産性向上については、次のような研究結果が出ています。2,300名のアメリカの大学生対して、学部1年時と3年時にクリティカル・シンキングやライティングといった生産性に係るスキルについてテストを実施したところ、45%のサンプルが目立った進展を見せなかった。(※資料1) つまり、大学は年齢的な成熟にも関わらず、約半数の生徒に対して、生産性向上に寄与できていないということです。

      2.大学の価値は今後どうなるのか?

      では、大学の価値は、今後世界的にどのように変化していくのでしょうか。私自身は、その価値が大きく低下するリスクがあると考えています。理由は3点あります。

      まず1点目に、アメリカ型の高等教育が広まることに起因する授業料高騰によって、費用対効果が低下する可能性が高い為。

      2点目に、インターネットにより、情報が容易に手に入るようになり、大学で学ぶことの価値が相対的に低下する為です。例えば、いまやハーバードやスタンフォードといったトップスクールの授業が、“MOOC”と呼ばれるオンラインの授業形態で、無料で受けることができます。他にも、例えば本ブログでも何度か参照しているエコノミストなどの、大学での授業に引けをとらないクオリティの情報が、世界中どこにいても容易に手に入れることができます。

      そして3点目に、大学進学者数が世界中で大幅に増加する為です。先述の価値の源泉は希少性と同じ原理で、“需要と供給”のバランスを指しています。

      ・需要が増える = 欲しい人が多いとその価値は高まる
      ・供給が増える = 提供する量が増えるとその価値は減る

        ex) iPhoneはたくさんの人が欲しいと思っているので、中古品ですら高値で取引されています。しかしAndroidのスマートフォンは、多くのメーカーが様々な機種を提供しているため、供給過剰になり、どんどん値段が低下しています。

        つまり物の価値とは、需要と供給のバランスで決まっているのです。

        さて大学の話に戻ると、世界中でより多くの人々が大学に通えば通うほど、その価値は低下していくということです。例えば、下記のグラフを見ると、一目瞭然ですが、より貧しい国、すなわち大卒者が少ない国ほど、大学を卒業した者へのリターンは大きくなっています。(※Chart1) 一方で、日本や韓国など非常に高い大学進学率を誇る国では、高学歴ワーキングプアーや、就職難といった課題が生まれています。

        そして、今後さらに高等教育の需要は拡大していくと予想されています。下記のグラフを参照すると、世界の大学生世代における大学入学率は1995年から2012年までに14%から32%へ上昇しています。(※Chart2) これは車の需要が成長するより速く、かつての物質的な飢えが存在した時代から、高等教育に対する切望へと変化していることを示しています。また中国では、2020年までに大学生世代の国民の40%に対して高等教育を提供することを目標としており、今後より一層その供給は増えていくことが予想されています。

        Chart1

        Poorer countries, richer returns

        ●Chart2

        Never mind the car, get the degree

        3.これから高校生や大学生はどのように大学生活を歩むべき?

        ではこれからの時代、日本の高校生や大学生は、どのように大学生活を歩むべきなのでしょうか?ここからは、私なりに感じることを少しフランクに書いてみようと思います。

        私は、大学4年間をただ決められたレールを歩むのではなく、どこに自分の時間を投資すべきなのか、どの機会が自分の将来にきちんとリターンをもたらすのか、自分自身できちんと考えるべきだと思います。

        なぜなら、人は機会によって成長しますが、きちんと努力をすれば全ての機会がリターンをもたらす保障などありません。例えば、大学で等しく全員に与えられる機会として、学問を修めることがあります。そして真面目に学問に取り組むことは例外なく礼賛を受けます。しかし、ほんとうにそれが、自分の時間を投資すべき最善の機会なのでしょうか?

        決して学問を否定している訳ではなく、大学を通して学ぶ学習効率や、クオリティを考慮すると、他にもっとリターンを得ることのできる機会がある可能性があるということです。実際、脳科学者の茂木健一郎氏が、「日本の文系教授は輸入業者」と揶揄したように、大学では最新事例や理論を紹介しているに過ぎないことも多く、本を読めば大抵キャッチアップできてしまうケースも少なくないと思います。すなわち、端的に言えば、それほど価値のない機会である可能性があるということです。

        無論、一人一人思い描く将来像は違いますし、興味関心も十人十色なので、どんな機会を選ぶかは人それぞれです。それは留学かもしれませんし、インターン、起業、アルバイト、学問、サークルかもしれません。大事なことは、ただ目の前にある大学生活をこなすだけではなく、自分にとってほんとうに価値があると思う機会を自ら掴み、その中できちんと努力をしていくことだと思います。

        ちなみに、じゃあ大学行く意味あるの?という声も聞こえてきそうですが、多くの人にとって、「大学に行っても意味ないらしいから辞めとく」といった選択をするのは、相当勇気のいる決断だと思います。つまりリスクヘッジとしての大学進学が妥当な線ではないかということです。私自身、大学を卒業してもしなくても、ほとんど何も変わらないと思いますが、リスクヘッジとして卒業はします。(将来に対して圧倒的な自信がある訳ではないことの裏返しですね。笑)

        (以上)

        それでは、長文にも関わらず、ご一読いただきありがとうございました。

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        “What makes an university worthwhile? ”

        I’m Ryosuke Matsui, a member of Konishi seminar. If you are interested in the university’s global current situation, here are three things for understanding its truths and tips.

        1. What makes university worthwhile?

        For individuals, generally, there are three reasons why they go to a university: “the graduate premium” which means the wage difference between people who have a degree and don’t, making their productivity higher, and giving a community that enables to have great human relationships. Speaking of its advantage, people tend to think that gaining specialized knowledge is valuable for their entire career though, that is not true for education, but research. In fact, “Economist”, the most reliable newspaper, published a special issue of university, but they never mentioned that obtaining the knowledge could be an aim of going to a university. That means that nobody think the knowledge is useful for individual’s career, even if they graduate from world top school.

        In my opinion, the community is the most valuable asset in the university because it remains high quality by its admissions process. What about the other reasons? Unfortunately, no one is sure whether a university contributes to increase student’s productivity and give the graduate premium. For instance, in United States, a bachelor degree yields 15% return. However, it is unclear that whether “graduate premium” is because of consequence of higher productivity or of being evaluated its rigor admissions process. Actually, a study shows that the reason why firms want to recruit from top school is not because of its superb curriculums, but its tough admissions process. This is called “credentialism.” Therefore, students enroll university to avoid the risk of without degrees. Also, another recent work by American academics suggests that American university does not perform well for increasing its student’s productivity. Richard Arum of New York University and Josipa Roksa of the University of Virginia, authors of “Academically Adrift”, looked at the results of 2,300 students who took the Collegiate Learning Assessment (CLA), a test of the productivity, and found that 45% of the sample showed no significant gains between their first year and third.

        2. How is university’s future going to be?

        So what is the future of the university? I think its worth is going to decrease due to three reasons. At first, for now, American tertiary-education is spreading all over the world. This leads the amount of investing on the education much higher. Unless the quality of higher education becomes much higher, investing higher education is going to become harder to get value for money. Second, its worth will deteriorate relatively due to the Internet. It allows us to get high quality information and education easier. Here are some examples. “MOOC”, which provides online education, enables people to take top school’s classes, Harvard and Stanford …so on, for free. They are also able to subscribe “Economist” wherever they are, and that gives them the opportunities to gain as valuable information as a university does. Third, it is because of the laws of supply and demand. This means that vast increase in the number of graduates would reduce the return on investing degree. For example, according to the chart2, a degree in poorer country would give people higher return than in richer country. In the other hand, too many extremely high enrolment rate in Japan, has led to high graduate unemployment. In addition, the number of graduates has been increasing globally.  For instance, the global university’s enrolment ratio increased from 14% to 32% in the two decades to 2012 (chart1). This growth was faster than the purchases of car. In China, as well, the government aims to enroll 40% of its young people in university. Thus, globally, the number of graduates will have increased, and the value of degree will have decreased.

        3. Making 4years more valuable for your future.

        Here are some advices for students to make their college life in Japan more meaningful. You should find opportunities that would give you great return to your future by yourself, and invest your resources on it. Even though opportunities make people improved, but some does not. That’s why you have to choose it carefully. For instance, a university offers great opportunities to learn academically and to gain benefit for your future career. No one would complain about what you do as long as you study hard because they think that’s the best thing for you. However, as I said, it might be not true. You might have better opportunities, even if you study same things as at a university. In fact, as Mr. Kenichiro Mogi, a neuroscientist, said “Most of Japanese professors, except in the field of science, are just like merchant.” This means that it is not worth to spend much time because they just tell students basic things and someone’s latest theory. Therefore, self-learning would be enough to catch up, and a more efficient way.

        If you want to have a meaningful college life, you must not spend time just like most people does. There are a variety of opportunities in front of you, and you have to make decision based on your career plan and will. No matter what you take, you have to do your best. Then, the 4years would be worthwhile, even if you looked back it 20years later.

        Thank you for reading, and I hope this would be the worthy “opportunity”.

        【参考資料】

        ●資料1

        ECONOMIST「The World is going to university」2015/08/04

        http://www.economist.com/news/leaders/21647285-more-and-more-money-being-spent-higher-education-too-little-known-about-whether-it

        ●Chart1, 2

        ECONOMIST「Excellence vs Equity」2015/08/04

        http://www.economist.com/news/special-report/21646985-american-model-higher-education-spreading-it-good-producing-excellence#

        ●その他

        ECONOMIST「Having it all」2015/08/05

        http://www.economist.com/news/special-report/21646990-ideas-delivering-equity-well-excellence-having-it-all

        ECONOMIST「Mix and Match」2015/08/05

        http://www.economist.com/news/special-report/21646991-both-provision-and-funding-higher-education-shifting-towards-private-sector-mix

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        プロフィール


        NAOMI KONISHI
        研究分野のキーワード 国際協力、国際人事政策、能力開発・キャリア開発 研究内容 私は着任前、国内の外資系企業及び国際機関にて、組織の人事政策や人材戦略に基づく人事管理業務に携わっており、...

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