宝塚映画の謎Part1:総政100本の映画番外編

2009 12/28

 伊納さんともども、畑先生から“宝塚映画”についてのホームワークが課せられたようですが、面白そうです。学生の皆さんも、こうした“課題”にどう取り組むか、お勉強と思って、興味がある方はお付き合いください。

 ちなみに、“宝塚映画”のリストを見ると、いまとっさに「この作品だ」と思いだすものは、残念ながらありません。とは言え、私が小学校から中学にかけて時分の作品群について、往時を思い出しつつ、何か言い添えることぐらいはできるかもしれません。学生の皆さんは、私が勝手に言い散らす言葉を頼りに、作品をそれぞれ観ていただければと思います。

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 まず、宝塚映画、名前自体をまったく知りませんでした。それで、こういう時には「なんでも載っている(でも、完全に信用してはいけない)Wikipedia」を開いてみましょう。宝塚映像という名前になっていますが、映画会社の有為転変が背景にあるようです。畑先生からご提示のリストを概観すると、どうやら3段階に分かれるとみました。Part1では、この第1期、1938年8月に開設、1941年に閉鎖された宝塚映画製作所について考えてみましょう。

 さて、第2次大戦開始前後の短い時期。『山と少女』『雪割草』、いかにも星菫調の宝塚歌劇の地元にふさわしいタイトルです。俳優も「山鳩くるみ」「桜町公子(雪組トップスター)」「葦原邦子(宝塚レビュー時代のスーパースター)」と歌劇陣が並んでいます。つまり、宝塚歌劇の延長上の映画製作というべきものではないかと思います(Wikipediaによれば、宝塚歌劇団の付帯事業として出発)。後で触れるように、この時、宝塚・阪急の総帥小林一三は、すでに1937年、東宝映画を設立しています。したがって、その宝塚版をねらったかもしれません。

 余談ですが、この小林一三は「「乗客は電車が創造する」という言葉を残し、鉄道沿線の住宅地開発・百貨店経営など幅広く関連事業を経営し、沿線地域を発展させながら鉄道事業との相乗効果を上げる、今日の私鉄経営のビジネスモデルの原型を作った一人である」(Wikipediaより)。

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 宝塚映画に話を戻すと、1940年のタイトルは『女学生と兵隊』『瞼の戦場』と一気に暗転=戦場ムードです。もっとも、『瞼の戦場』の俳優には、戦後も活躍した「月丘夢路」も入っていますし、次の『南十字星』(いかにも、日本軍の南方進出をイメージさせるのでは;このあたり完全に推測です)では戦前のオペラ歌手の大物「藤原義江(男性)」もいます。ひょっとしたら、これらの作品は、戦場の兵隊さんたちにしばし甘い夢を見せるための「慰問映画」だったかもしれません(これももちろん推測です)。なお、月丘夢路は娘役トップスターから、この『瞼の戦場』が映画デビュー、次に1942年大手の大映映画の『新雪』で大ヒット、1943年に宝塚を“卒業”後、大映、松竹で映画スターになります。1957年、宝塚映画リストNo.41の『ジャズ娘乾杯』等の監督にしてプログラム・ピクチャーの名手井上梅次と結婚します。

 さて、Wikipeidaの「日本映画」を見ていると、こんな記述が見つかりました。第2次大戦突入前、「ABCD包囲網による経済制裁が発動すると、アメリカからのフィルム輸入が途絶え、国産フィルムは軍需品とされ、厳しい使用制限がかけられ、映画業界にとって死活問題となった戦前数多く存在した独立スタジオの閉鎖、合併を繰返し、映画産業の規模は急速に縮小し、東宝、松竹大映の3社を残すのみとなった」。できたばかりの宝塚映画も、これに巻込まれたのは想像に難くないところです。それにしても、映画を作るためにはフィルムが要る。そのフィルム生産を支えるインフラが不十分だったわけです。

 つまり、第2次大戦さえなければ、現在のジャニーズ事務所さながらに、宝塚音楽学校 → レビューデビュー → トップスター → 映画デビュー → 卒業 → 映画スター量産システムに移行していた可能性もあります。それが戦局の激化とともに、むなしく散って行ったわけです。ちなみに、小林一三(関学にとっても、原田の森から上が原キャンパスに移転する際の恩人)は、先ほども触れたように1934年に東京進出をねらって「東京宝塚劇場」を創設、M&A等を駆使して、「東宝」を設立して現在にいたっています。

 このあたり、本当のところを、是非、映像大好き、あるいは宝塚大好きの畑ゼミ、井垣ゼミの皆さん等に調べてもらいたいところです(十分、文化社会学的レポートになるのでは)。   To be continued…..

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プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...

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