総政100本の映画Part13振り返り編:『ゴッドファーザー』そして『ワイルド・バンチ』:暴力装置を通して見るアメリカ合衆国のなりたちについて#3

2011 1/13 総合政策学部の皆さんへ

 #1~#2で説明したアメリカ社会における政治と暴力の歴史をたどるシリーズ、ここでやっと本来の映画紹介、映画番号#14:フランシス・コッポラ監督『ゴッド・ファーザー』Part1&Part2の話にたどり着きました。

 すでにイタリア系移民についてはご紹介ずみですが、ゴッドファーザーPart1とPart2、とくにPart2で主人公ビトー・コルレオーネ(Vito Corleone)の前半生が回想的に語られます。故郷シチリアで父を、兄を、そして母も殺され、自らも“復讐”を恐れた仇の目標となり、言葉も満足にできぬアメリカにわたったビトー(Part1で老境のビトーを演じた怪優マーロン・ブランドに負けぬとも劣らぬロバート・デ・ニーロの出世作ともいうべき演技です)。  

 かつてコロシモが経験した“移民からのなりあがり”のストーリーと同様、彼はけちな窃盗犯から、やがて同じイタリア人から金を撒きあげている“黒手組”に対抗する存在にのしあがり、そして持ち前の才能で様々な人々からの依頼に応え始めます。その際の信条が「家族を守る」であり、「友達を信じる」。その結果として、いつしか、政治から経済、労働組合から芸能界まで支配の手を伸ばす存在になってしまう(Part1にはフランク・シナトラがモデルと言われている登場人物がでてきます)。

 その際に、あたかも「名付け親」のごとく、頼み込んでくる者たちの願いをかなえ、また人々の間の軋轢を調停していく存在、これが「ゴッドファーザー」の由来です。

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  とは言え、Part1は映画としてはいわば定石通り、昔からの表と裏の稼業を続けながら、ゴッドファーザーとして頼ってくる者たちにはそれぞれ細かな配慮を示す父親ビトー、家業を継ごうとするけれどやや粗暴で女癖にも問題のある長兄ソニーと、気が弱く、そのためあとで“一家”の足を引っ張る事になる次兄フレド・・・。

 そして、兄たちとあまりに対照的に、家業を嫌い“ふつー”のアメリカ人になろうと、家族の反対をおしきって第2次大戦に海兵隊員として従軍、ガールフレンドもまったく外の女性(アイルランド系のダイアン・キートンが演じています)を選ぶ三男マイケル(俳優アル・パチーノのデビューです。ちなみに彼は祖母がシチリア出身)。

 父親はこの末っ子の“反抗”に手を焼きながらも、実は、もっとも才能があることを感じている。このイタリア系の血でむすびついた家族を、いわば一家の“養い子”のようなドイツ系アイルランド人のトムが半ば第三者的に眺めている、こうした光景が展開します。

 しかし、“赤の女王仮説”通り、すべてが幸せなままで過ぎていくことは無い。環境が変われば、自らも変わらないとやっていけなくなる。この場合、ギャングにとって新たな稼ぎの対象である麻薬ビジネスをどうするか? #2で触れたコロシモとトーリオの対立(新しい密造酒ビジネスに踏み込むか?)と同様に、時代が変わり、小道具が変わっても、人々の心は同じように揺れ続けます。Part2はその人々の心の揺らぎにあわせるように、父ビトーと息子マイケルの二人の人生が、フラッシュバックのように交錯しながら展開します(ちなみに、Part1とPart2の双方でアカデミ作品賞を受賞した唯一の映画です;1972年と1974年)。

   赤の女王仮説:「生存競争に生き残るためには常に進化し続けることが必要であり、立ち止まるものは絶滅する」(Wikipediaより)。『鏡の国のアリス』から、赤の女王の「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」という台詞に由来。   

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 と、このように説明していくとすべてネタバレとなり、映画を楽しむという余裕もなくなるというもの。Part1とPart2の映画はひとえに、(1)最下層移民のイタリア系というアイデンティティにもとづきつつ、頼ってくる者たちの訴えに耳をかし、善悪両方の手段を駆使して、世をうごかし、すべての者への“ゴッドファーザー”として君臨するビトーの人生と、(2)社会の変化にともない、古いビジネスプランが崩れ、また新たなビジネスが生まれてくる様(Part2でのカジノホテル(=現在でも有名なラスベガスのホテル・フラミンゴがモデル)や1950年代後半のキューバ革命直前ハバナでのビジネス等)、そして(3)イタリア系から“アメリカ人”になろうとしながら、様々な経緯で、結局は家業を引き継ぐしかないマイケル(その過程で、裏切った次兄を殺し、妻とも別れ、その後ろめたさに苛まされる)の心情をたどるものです。

  Wikipediaでは「ビトーの前半生とマイケルの現在を対比させ、家族(ファミリー)を守るためにマフィアになり、組織(ファミリー)を作ったビトーと、家族を守るためにマフィアを継いだが、いつの間にか組織を守るために、家族を失っていくマイケルの姿を対照させている」と評しています。皆さんも、アメリカ社会を理解するため、ぜひ、この一大絵巻をご覧ください。

 ということで、#4はもう一つの暴力世界、西部劇に話を移しましたいと思いますが、現存する最古の西部劇(1903年)、「ラストでスクリーンの中から観ているあなたにめがけて撃たれる1発の銃弾!」で有名な『大列車強盗(The Great Train Robbery)』のユーチューブ映像のURLは以下の通りです。 http://www.youtube.com/watch?v=Bc7wWOmEGGY

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 ところで、Part2では、ビトーがアメリカに入国する際、入国管理官のミスから本来の苗字であるAndoliniを出身地のCorleoneに間違えて登録されてしまうエピソードがでてきます。そう言えば、私のアメリカ人の知り合いがちょっと変わった姓だったので、その由来を尋ねたところ、「東ヨーロッパなんだろうけれど、入国管理官に適当にスペルを付けられたので、今となってはどこの国だか分らんね」と聞いたことがありました。

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プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...

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