市の人類学番外編:異文化交流の場としてのマーケット

2011 2/6 総合政策学部の皆さんへ

 2月5日の土曜日に上ケ原で用事があったのですが、それが早めに終わったので、阪急で久しぶりに南京町まで出かけてところ、時ならぬ大賑わいです。土曜日のせいかとも思ったのですが、いつもの土日とは少し雰囲気も違う。実はこの3日から6日まで、春節祭だったのですね。

  南京町の春節祭HPは http://www.nankinmachi.or.jp/shunsetsu/spring2011/index.htmlですが、旧暦で節句を祝う中国では旧暦のお正月を「春節」として盛大に祝います。この時期の中国は爆竹が鳴り響き、祝い事には欠かせない龍や獅子が舞い踊り、大いに賑わいます」とあります。なお、年によって、1月の終わりから2月の中旬まで、変動するようです。これは中国の旧暦、すなわち太陰太陽暦に基づくからだそうです。

 実際の季節のずれを、閏月の挿入によって補正するのですね。イスラーム暦(ヒジュラ暦)も太陰暦ですが、太陽暦のグレゴリオ暦とは差が生じるため、毎年の断食月(ラマダーン)がだんだんずれていくのを思い出します(3年間、アフリカのイスラーム社会で暮らしましたから)。残念ながら、今日の6日で春節祭はおしまいですが、9月頃には中秋祭というのもあるようです。

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 しかし、良いですね。移民の人達が、移住先で故国の習慣でお祭りして、そのお祭りで異文化の交流が始まる。似たようなイベントで世界でもっとも有名なものの一つには、イギリスはロンドン西部のノッティングヒルで、トリニダード・トバコ出身者によって行われる“ノッティング・ヒル・カーニバル”があげられます。

  英語版Wikipediaは“The Notting Hill Carnival is an annual event which since 1964 has taken place on the streets of Notting Hill, Royal Borough of Kensington and Chelsea , London, UK each August, over two days (the August bank holiday Monday and the day beforehand). It is led by members of the British African-Caribbean community, particularly the Trinidadian and Tobagonian British population or ‘Trinis’, many of whom have lived in the area since the 1950s. The carnival has attracted up to 2 million people in the past, making it the second largest street festival in the world after the Trinidad and Tobago Carnival held in that country”と報じています。

 1983年、初めてロンドンに行った時(といっても、2回しか行ったことはありませんが)、ロンドンの街はアフロ系、アジア系いりまじっていて、まことに国際都市なのだという印象だったのを思い出します。なお、ユーチューブに2010年のカーニバルがのっています(http://www.youtube.com/watch?v=eAHWe381-hU&feature=fvw)。

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 さて、南京町に話を戻すと、やはりお祭りですから、普段とは、雰囲気も、店の様子も違います。いつも立ち寄る廣記商行(http://www.koukishoko.co.jp/main.html)は、店頭で焼きそばのファストフードを営業しているので、すごい人だかり、店の中に入るのが一苦労でした。

 この店は地階が中華料理や東南アジアの材料がぎっしり並んでいるのですが、とりあえず蝦子麺(蝦の卵が練り込んである麺という触れ込みですが、邸永漢の『食は広州に在り』(書籍番号#46)によれば、実は蟹の卵である由。とりあえず、味が良ければ、蝦であろうと蟹であろうと、こちらに文句はありません)と、タイの麺類クィティアオ(ライスヌードルの幅広型)を買い込みましたが、レジがまた何時になく混んでいて、支払いに待たされてしまいました。

 その次に、こちらも店頭でやっているファストフードをぱくついている方々を押しのけるように、林商店に入ります。こちらも店は小さいながら、種類がいっぱい。インドネシアの調味料と四川料理火鍋のペーストを買い込みました。私が買っている隣では明らかに東南アジア系の方々が、中国系の店主と日本語で会話を交わしている。このあたりから、日本語のクレオール化リンガ・フランカ化も始まるかもしれません(という話は、すでに「スワヒリ語をベースにピジン、クレオールを考える;言語政策についてPart2;国際援助の現場から#7(2010/02/23 でも触れていますが)。

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 それにしても、南京町もファスト・フード化がますます隆盛をきわめていました。食堂の店頭に露店を出して、各種の麺類・点心類等を商う。たしか、最初は、20年前くらいに、廣記商行の斜め向かいの食堂、青龍あたりが始めたのではないかと思うのですが、一杯200円でポリスチレン製の小丼で一口ラーメンを売り出し、それが水餃子になり、大根餅があらわれ、ビーフン専門店があらわれ、刀削麺屋ができて・・・・と今や、点心・麺類全盛期です。是非、皆さんも(あまり混まない時期に)お出かけ下さい。

 なお、 南京町での私のお薦めは、廣記商行製の鳥ガラスープの素、蝦子麺、エビ煎餅、タイ製ではセンレック(ライスヌードル)、トム・ヤム・クンペースト、魚醤のナンプラー(ラドル先生のご専門ですね)。ファスト・フードではなんといっても油条(揚げパンとして売っていますが、千切ってお粥にいれると絶品です)等でしょうか。

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 さて、異文化が出会うマーケット、もう一つお薦めは、なんといっても上野アメ横のアメ横センタービルの地下の食品店街です。 そのセンタービルの公式サイトはhttp://www.ameyoko478.com/ですが、とくに地階の店々は売る人も買う人も、日本人はあまり目立たず、様々な人々がいきかう、アジア的世界です(福澤諭吉先生等が“脱したかった”アジアかもしれませんが)。

 この場所は、たまたま、まったく偶然見つけました。上野のアメ横は皆さん、ご存じですね? 上野駅から南に延びる高架下を中心に、戦後発達したといわゆる闇市場からたくましくも生き残った巨大商店街。一説には、アメリカ軍の払い下げ物資を売りさばいたためとも、戦後の貧しい時代、飴をうっていたために「アメや横町」と呼ばれるようになったともいわれている場所です。NHKでは、年末に限り、人々が安い食材に殺到してるところをTVで放映するのが、年の背の年中行事になっているあそこです。ある年、そのアメ横を歩いていると、階段の入り口のあたりから、なんだか嗅いだ事があるような匂いがかすかに漂ってきて、そのまま引き込まれるように下に降りた、そんな感じです。

 私が知っている限り、ここはエスニック材料がもっとも揃っているところかと思うのですが、例えば、イスラーム教徒用のハラールの冷凍カモ肉がどういうわけかブラジル原産であったり(ただし、中国産の冷凍カモに比べて、味はもう一つでした)、ニュージーランドのラム肉の塊が超安値だったり、タイ産の小形トウガラシ(かわりにとんでもなく辛い)の冷凍が一パックたった300円だったり、日本人はまず食べない雷魚が置いてあったりします。

 また、上海蟹が十文字に糸に縛られて並んでいたり(心なしか、だんだん小形になっていくような気がするのですが。乱獲ではないでしょうね)、フィリッピン産の塩干物の魚等が無造作においてあったり、バナナの花(食べるためです)が置いてある八百屋もあり、エスニック料理の材料の百花繚乱、東京で何か時間が空いた時は、是非、お出かけ下さい。Wikiepdiaでも「中国やエスニックの食材が売られており、多くの中国人、インド人などが買い物に訪れるため、店員も中国人が多く、中国語が飛び交っている」と書かれています。

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 このあたりで充分長くなってしまったので、to be continued・・・・とします。

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プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...

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