2013年11月

東南アジアでは、なぜライスヌードルなのか?:食べることについてPart 13 

2013 11/6

 総合政策学部の皆さんへ まず、皆さんはご存じでしょうか? 中国語で“”と言えば、どんな意味なのか?

 この言葉は日本語では“メン”、インドネシア語では“ミー(例えば、焼きそばはミー・ゴレンと呼ばれます)”の語源ですが、そもそもの意味は何でしょう?  実は、“麺(ミエン等と発音するそうですが)”は本来「小麦粉製品」という意味なのだそうです。したがって、“蕎麦”も、“ビーフン”も、“韓国冷麺”も、“春雨”も、本来の意味の“麺”ではない。

   皆さん、ちゃんと知っていますよね。蕎麦は蕎麦粉(もっとも、つなぎに小麦粉を使うことも多いわけですが)、ビーフンはコメでできている(つまりライスヌードル)。

  韓国冷麺(レイミェン/レイミェン)はそば粉とデンプン(小麦粉の場合もあるそうですが)、そして春雨はデンプン(本来はリョクトウ、現在はジャガイモやサツマイモ)で作るわけですね。

 一方で、“麺食”には小麦粉で作った製品もふくまれるため、餃子や肉まんなど饅頭や点心も含む.当然、パンも“麺包”と表記する、というわけです。Wikipediaには「後漢の『説文解字』には「麺」の本字である「麪(ミエン)」は麦の粉とある。唐の『広韻』も西晋の束晳の『麪賦』を引いて重羅の麺は埃のように細かく雪のように白いと記し、「麵」は同上としている。「麵」は「麪」の音を表す部品「丏」を同音の「面」に置き換えた異体字である」としています。

 ということで、本来“麺”ではないビーフンをどうすればよいのかと言えば、ここは英語でRice noodleと言った方がよほどわかりやすいのかもしれません。それでは、どうしてタイワン(新竹ビーフンの本場ですが)から南、東南アジアにライスヌードルが多いのか?

 これは大昔、私がまだ京都でうろうろしていた頃に本業の人類学よりも、料理についての該博な知識で知られた石毛直道先生が語る研究会にでたら、ごく簡単に「東南アジアでは小麦はとれないから、米でつくるしかないんですよ」とおっしゃたので、なるほど! と納得しました。皆さん、お気づきでしたか?

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 このように中国語での“麺”が材料を基準としたカテゴリーなのに対して、日本の“蕎麦”も本来はソバという材料が語源なのに、まったく蕎麦粉を使わない沖縄そば(ソーキそば)や中華そば(Wikipediaの「中華そば」は、さらに中華麺ラーメン冷やし中華の3つのサブカテゴリーに分類されています)まで含み、形状的なカテゴリーにもなっています。

 これは英語の“ヌードル”にも近いようですが、それではヌードルとは何か? この点、日本語版Wikipediaは「ヌードル」は「麺」を見よ、ということになって、これはちょっと安易な設定のようです。

 それでは英語版Wikipediaで“Noodle”を探すと、その定義は“The noodle is a type of staple food made from some type of unleavened dough which is rolled flat and cut into one of a variety of shapes. While long, thin strips may be the most common, many varieties of noodles are cut into waves, helices, tubes, strings, or shells, or folded over, or cut into other shapes.”

 そしてこのdoughとは、“Dough is a thick, malleable, sometimes elastic, paste made out of any cereals (grains) or leguminous crops by mixing flour with a small amount of water and/or other liquid. This process is a precursor to making a wide variety of foodstuffs, particularly breads and bread-based items (e.g., crusts, dumplings), flatbreads, noodles, pastry, pizza, bread rolls, biscuits, cookies and similar items. This includes all kinds of breads or similar recipes made from maize, rice, sorghum, wheat, and other cereals or related crops used around the world.”

 この定義だと、たいていの穀物が包含されますし、また、色んな形の食物が含まれることになります。イタリア語のパスタが「スパゲッティ、ペンネ、ラザニア」を含む概念だというのとほぼ同じようです。

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 そのパスタの材料は主として小麦ですが、イタリアではソバ粉や米粉のパスタもあるそうです。

 そば粉と言えば、実はフランスでも食されていて、クレープの原型は「元になったのは、そば粉で作った薄いパンケーキのガレット (galette) という料理である」とのこと。

  そういえば、『あしながおじさん』でもジュディの手紙に“そば粉のクレープ”がでてきたはずです。

プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...