2015年6月

チアガールとアメフット、メジャーリーグ、そして“マナティーズ”

2015 6/23 総合政策学部の皆さんへ

 ひさしぶりの投稿です。チアリーダーとアメフット、そしてメジャーリーグと3題話を並べましたが、この意味、とっさにご理解できるでしょうか?

 チアリーダーとは「スポーツ(アメリカンフットボールなど)における応援チームのことである。日本では一般的にチアガール、男性の場合はチアマンとも言われているが、これらは両者ともに和製英語であるWikipedia)」。

 「一般にアメリカ合衆国の学校においては、チアリーダーの女子生徒らはちょうどジョックの女子版(クイーン・ビー=女王蜂/学園女王)に相当し、生徒らの中の典型的な「人気者集団」を形成することがしばしばである。大衆文化においても、「人気者(ポピュラー)な女子学生」の典型として描かれやすい。

  いわば「花形」であるために競争も非常に激しく、チアリーダーになるための英才教育を子供の頃から施されるという女児も多い。とあるチアリーダー候補の女児の母親が、娘をチアリーダーにしたい一心から、競争相手の女児を殺害しようとしたという事件も起こっている」とあるように、ある種アメリカ文明の象徴とも言うべきでしょう。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ちなみに上に出てくる“ジョック”とは「アメリカ合衆国における人間の類型のひとつで、狭義ではアスリートの男性を指し、広義ではしばしば同国の社会、とりわけ学校社会における、いわゆるスポーツマンを主とした「人気者の男性」を名詞として総称する。アメリカ合衆国の社会でも特に学校社会のヒエラルキーの頂点に位置するジョックは、対概念たるナードとともに、米国の社会および文化の象徴の一として語られもする(Wikipedia)」。

 これこそ、パットンが“The Speech”の冒頭で獅子吼する「アメリカ人は闘争を愛している。全ての真のアメリカ人は、戦いの痛みやぶつかり合いを愛している。諸君が子供だった頃、諸君ら誰もが賞賛したのはビー玉遊びの王者とか、一番足の速い奴、大リーグの選手、最強のボクサーだった。アメリカ人は勝者を愛し、敗者を認めない。アメリカ人は、常に勝つためにプレイする。これこそ、アメリカがこれまでも、そしてこれからも負けを知らぬ理由だ。やたらと負けを考える事はアメリカ人に対する冒涜である。戦いとは、男が熱中できる最も重要な競技と言える。戦いは素晴らしいもの全てを発揮させ、それ以外の全てを消し去るのだ」という名台詞の対象です(それゆえ、ジョックになれない奴ら(ナード)に対する残酷なまでの仕打ちが展開する、というわけです)。

 そしてチアリーダーはジョックとともに、アメリカの高校社会の階層の頂点に君臨する存在である!! つまり、アメリカの高校社会は、マッチョ男とイケイケ女に支配されているということになりそうです。

 その高校文化の頂点の一つのはずのチアリーダーが、実はメジャーリーグにはほとんど存在していない、ということをご存じでしたか? 今年、イチローが移籍したマイアミ・マーリンズこそがメジャーリーグ30球団の中で唯一チアリーダー(フロリダにふさわしく“マーメイヅ”)なのだそうです。

 チアリーダーの有無、これこそベースボールとアメフットの間の微妙な差をこれほど象徴するものもないかもしれない、これが本日の話題です。ちなみに、北米4大プロスポーツリーグの他の競技では、NBA(バスケットボール)NHL(アイスホッケー)ではチアリーダーがいます。この差は何なのか? 大リーガーには、“チアガール”等要らぬ! という堅い決意の表明があるのでしょうか?

 調べて見ると、大リーグことMBLの創設年は1876年(Wikipediaによる)、アメフットのNFLは1920年、NBAは1946年、NHLは1917年です。この年代差が、チアリーダーへの温度差になるのでしょうか?

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

  それで英語版チアリーダーを見ると、チアリーディングの歴史も面白そうです。どなたか、進級論文か、卒業論文はいかがでしょうか? アメリカ文明の本質が明らかにされるかもしれません。例えば、“Before organized cheerleading”とあるのですが、

 “The roots of cheerleading began during the late 18th century with the rebellion of male students. After the American Revolutionary War, students experienced harsh treatment from teachers. In response to faculty’s abuse, college students violently acted out. The undergraduates began to riot, burn down buildings located on their college campuses, and assault faculty members. As a more subtle way to gain independence however, students invented and organized their own extracurricular activities outside their professors’ control. This brought America sports and cheerleading to participate in, beginning first with collegiate teams”. 学生によるriotとチア?? 何のことだ? とりあえず、結構事情は複雑そうです。

 “In the 1860s, students from Great Britain began to cheer and chant in unison for their favorite athletes at sporting events. Soon that gesture of support cross over seas to America. On November 6, 1869, the United States of America witnessed its first intercollegiate football game. It took place between Princeton and Rutgers University, and marked the day the original “Sis Boom Rah!” cheer was shouted out by student fans

 こうしてチアの組織化が始まるというのです。“The beginning of organized cheer”では、なんとすべて男性の活動だったそうです。

 “Organized cheerleading started as an all-male activity. As early as 1877, Princeton University had a “Princeton Cheer”, documented in the February 22, 1877, March 12, 1880, and November 4, 1881, issues of the Daily Princetonian. This cheer was yelled from the stands by students at games, as well as by the baseball and football athletes themselves. The cheer, “Hurrah! Hurrah! Hurrah! Tiger! S-s-s-t! Boom! A-h-h-h!” remains in use with slight modifications today and is now referred to as the “Locomotive”.

 それではいつから女子の活動になったかというと、もっぱら20世紀後半のようで、“Female participation”には、“In 1923, at the University of Minnesota, women were admitted into cheerleading. However it took time for other schools to follow. In the late 1920s, many school manuals and newspapers that were published still referred to cheerleaders as “chap,” “fellow,” and “man”. Women as cheerleaders seemed to be overlooked until the 1940s. In the 1940s collegiate men were drafted for World War II, creating the opportunity for more women to make their way onto sporting event sidelines. As noted by Kieran Scott in Ultimate Cheerleading: “Girls really took over for the first time.” An overview written on behalf of cheerleading in 1955 explained that in larger schools “occasionally boys as well as girls are included,” and in smaller schools “boys can usually find their place in the athletic program, and cheerleading is likely to remain solely a feminine occupation.” ちなみに1948年の女性によるチアの写真がありますが、まったく牧歌的です。

 これがアメリカの高校・大学を支配する巨大文化にあっという間に駆け上がってしまう、十分卒論、修論のレベルです。スポーツ社会学でも、カルチャー・スタディーズ でも、どなたか調べて見ませんか?

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 さて、この三題話の締めくくりはマイアミ・マリーンズに話を戻して、“マナティーズ”です。このマナティーズはなんと“チアリーダー”の逆転版というか、男性、それもマイアミの海にちなんで、太ったおじさんたちのチアリーダーという、パロディなのか、真剣なのか、それでも紛れもないアメリカ文化の一面です。というわけで、Florida Marins Manateesの勇姿をユーチューブ等で見ることができます。

プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...