2015年7月

バティックについて:ファッションの人類学Part 10

2015 7/12 総合政策学部の皆さんへ

 バティックと聞いて、ピンとくる方はどれほどいらっしゃるでしょうか?

  日本語にすれば「ろうけつ染め」、漢字では“蝋結染、蝋纈染、臈纈染”等と難しい文字が並んでしまいますが、“蝋”の字が示す通り「模様部分を蝋で防染し染色する伝統的な染色法」(Wikipeida)。古くは2~3世紀の中国から出土、世界各地に伝わっている染色の技術です。

 とくにインドネシア、マレーシアを中心に東南アジアに広がっています。日本にはおそらくインドネシアからの輸入がはじまりなのか、別名「ジャワ更紗」で流通していた時期がありました。ほら、北原白秋作詞、山田耕筰(戦前の関学出身者ですね)作曲の『すかんぽの咲くころ』(旧小学校唱歌、6年生向け)に登場しています(昭和2年)。
 土手のすかんぽ ジャワ更紗
  昼は蛍がねんねする
   僕ら小学一年生 今朝も通って またもどる
    すかんぽ すかんぽ 川のふち
     夏が来た来た ドレミファソ

 ちなみに、すかんぽとは標準和名でイタドリのことですね。歌詞もちょうど今の時期にあっているようです。

 バティックがどんな図柄なのか、英語版Wikipediaの“Batik”に色々画像があるので、紹介しましょう(それにしても、日本語版Wikipediaの記述はあまりにも貧弱です)。なお、バティックには型を使ったものと、手書きのものがありますが、バリ島等で観光客用に作られる手書きのBatikは非常に高価だったと覚えています。

 そのバティックはインドネシアからインド洋を隔てた東アフリカのタンザニアでも作られていて、実は、私はまずアフリカでバッティックを知りました。ろうけつ染めの淡い色合いで、マサイやキリン等を描く、布というよりも絵のような感じの白人向け土産物の定番でした。

 Webで探すと、ティンガティンガなどのように、ずいぶんモダンな感じのようですが。それでは、以下、ティンガティンガやアフリカン・バティックのサイトを貼り付けます。

・Zanzibar Crafts&Culture Tour

http://www.tingatinga.info/

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 それにしても、「筆などで溶かした蝋を布に塗り、模様を描く。染料にてその布を染色し、蝋を落として水洗いする。蝋を塗った部分は白く染め抜かれる。複数の染色のためにはこの工程を繰り返す。蝋を乾燥ひび割れを入れることによって、独特の亀裂模様を作り出すことも多い(Wikipedia)」という方法を誰が思いついたのでしょうか? そして、世界各地に点々と伝わっているこの染め方は、どのように伝播していったのか、ちょっと不思議な気持ちがします。

 と思ってちょっと調べて見ると、あるHome pageには「ワックスプリントは、もともとは西アフリカや中央アフリカで愛用されている布で、製造過程は、ろうけつ染めのように、機械を使用して生地の両面に樹脂をつけて防染し、染色桶にいれて浸染させてから、その後、樹脂などを落とし、再度、木版ブロックやローラー機械などで染色する方法で作られます。

 この布は、もとともとインドネシア独特のろうけつ染めであるバティックあるいは模倣バティックがそのルーツといわれていますが、インドネシアのバティックと対峙するアフリカ向けの布として「ワックスプリント」という名称で、長い間、研究・生産・流通してきており、「ワックスプリント」布独特の世界観が築き上げられてきています。

 最近、日本国内では「アフリカンバティック」と呼ばれているようですが、これは誤名で、正しくは「ワックスプリント」で、昔も今もメーカーは「ワックスプリント」と言う名称で作り、世界的に流通しています」と明記されています(Pole Pole Kanga Shop; なお、多数の写真が載っているので、関心がある方はご覧ください)。

 それでは、African wax printが正式名称なのか? しかし、よく考えてみればAfrican waxprintという言葉自体はどちらも“英語”! そもそもはアフリカの人たちは本来、どう呼んでいるのか? という疑問もわくわけで、Googleで英語のHPでのAfrican Baticを検索すると787,000 件、African wax printで検索すると1,010,000 件、後者が多いけれども、African Baticもそれなりの数にのぼります。「 日本国内でのみの誤用」というのはちょっと言い過ぎでは?? 英語のHPでは、Batikという言葉とWax printという言葉を併用しているのも見受けられますし、どんなものでしょうか?

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 ちなみに、“Global Mamas”というHPでは“History of African Batik”と題して、“The story goes the Belanda Hitam, Malay for Black Dutchman, brought batik to West Africa in the mid-nineteenth century after serving as indentured soldiers for the Dutch in Indonesia. Returning home from 15-year conscriptions, legend says the men brought back trunks of fine Javanese batik, covered in opulent whisper-thin patterns that captured the imagination of their friends and relatives. It’s a very neat story, but unfortunately, as any scholar will tell you, textile history is one sticky wicket. Of the 3080 recruits from 1831-1872, only a handful returned to West Africa (many married Javanese women), and those that did make it back, usually returned empty-handed; the recruits were not paid until they reached their final port, which would have made souvenir shopping pretty difficult”と紹介しています。この筋書きでは、東アフリカのろうけつ染めをバティックと呼んでも、それほどおかしくはないかもしれません・・・・

 このあたりでいささか尻切れトンボになりますが、実際に自分で“Batik”あるいは“Wax print”の由来を現地で調べてみないと、何とも言えないような気がします。

プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...