2016年10月

ResearchGateでみる自分の論文の“読まれ方”について#1

2016 10/30 総合政策学部の皆さんへ

 SNSばやりの昨今、科学者・研究者向けソーシャル・ネットワーキング・サービスもまた登場します。それが今回ご紹介のResearchGate、公刊済みの論文はもとより未公開資料の(pdfとしての)共有や、相互の質疑・交流も可能ということで、かのビル・ゲイツも出資しているというものですが、どんなものでしょう? もちろん、批判的な意見もあるようです。

 それはともかく、自分の仕事がどんな国の、どんな人に読まれているのか、ある程度把握できる、というところがミソかもしれません。研究者というのは所詮「名聞の餓鬼」に過ぎず、かの“工学部ヒラノ教授”こと今野浩教授によれば、ノーベル経済学賞受賞者P・サミュエルソンはアメリカ経済学会での会長演説で「経済学者というものは、この世でただひとつ価値のある貨幣のために身を粉にする。その貨幣とは経済学者からの称賛である」と喝破しているそうです。

 さて、この“称賛”を計る一つのメルクマールは“論文の引用”にほかならないのです(もっとも、やたらに引用されたからと言って、進化理論の分野では“グループ選択”で一世を風靡しながら、その後、個体選択の大波で奈落に引きずり込まれるVC・ウィン=エドワーズのように、否定されるために引用されるのでは、たまったものではありません)。

 その昔、マダガスカルでそのウィン=エドワーズの弟子に会ったことがありますが、すごく暗い顔で「君たちもよく知っているあのウィン=エドワーズが僕の先生だが・・・」と自己紹介していました)。その前に、そもそも“自分の論文を読まれているのか?”、このResearchGateである程度把握できる、ということに気がつきました。引用数はGoogle Scholarでも分かるのですが、購読数までわかるところがResearchGateの最大の特徴の一つかもしれません。

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 ということで、今年の1月31日から10月23日までの週に、私の論文がどのぐらい読まれたか、酔狂にも数えてみました。まずは、どの国の研究者が私の論文を“読んだ”のか? 見てみましょう。なお、この“読む”には”Summary reads”、”On-page reads”、”File downloads”の3種類が入っているそうです。これら一つ一つの差は些細なことだと無視しましょう。

 それでは、どの国の研究者が私の論文を読んでいるのか? 国別の統計では、まず“reads”の総計が718回、全部で54の国・地域(例えば、Hong KongとChinaが分かれています)ですが、このうち19国・地域(アルバニアからチュニジアなど)は1回しか読んでくれていません。

 対照的に、上位10カ国で77.9%です。ということは、やはり“サル”等を研究している“脳天気”な国は、世界からみればごく少数ということになるのでしょうか。この上位10カ国は、United States(194件、27.0%)、China (77 件、10.7%)、United Kingdom (67 件、9.3%)、Japan(66件、9.2%)、Germany(51件、7.1%)、Australia(33件、4.6%)、India(20件、2.8%)、Indonesia(18件、2.5%)、Spain(17件、2.4%)、Brazil(16件、2.2%)という順番です。

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 つまり、圧倒的にアングロサクソンかゲルマン(英米、オーストラリア、ドイツ)、それともアジア(中国、日本、インド、インドネシア)です。一つは霊長類学が基本的に英米と日本で発達したこと、そして私の仕事が類人猿とニホンザル、ワオキツネザルという3点セットのためでしょう。私が南米の新世界ザルをやっていたら、南米あたりからももう少し読まれていたかもしれません。

 それにしても、せっかく無料なのだから途上国の研究者ももっと利用して欲しいとも思いますが、アメリカなどの留学先から“読んでいる”方もそれなりに多いようです。ちなみにキツネザルの本場であるマダガスカルは13位でした。

 それでは、次に、どんな論文が読まれているか、についても調べてみたいと思います。to be continued…..

プロフィール


高畑由起夫
◆研究分野:生態学、自然人類学、霊長類学 ◆研究内容:主な研究対象はニホンザルやチンパンジー、ワオキツネザル等ですが、潮間帯の巻貝類や水生昆虫、カラス等も調べたことがあります。霊長類学の視点で、近縁...